前の職場でか細く弱いまっ黒な猫を拾った。
すでに名前はついており、「大福」と呼んだ。
自分が拾ったわけではないが、一夜を職場で過ごすのは不憫だと思い、夜は自宅で預かることにした。
飼うつもりはさらさらない。
最初は怯えていたものの、すぐに慣れてくれた。
どこの誰かもわからない人間の、膝の上で寝る小さな猫。
飼おうと決めた。答えは早かった。
寒かったのだろう、寂しかったのだろうと勝手なことを考えてしまう。
同時に、猫にとっては野生で生きることのほうが幸せかもしれないとも思う。
何れにしても、こういう状況になった以上、どんな道理でも大福にとって幸せになるよう務めるのが、飼うという事に付随する責任であると思う。
実家ではないところで動物を飼うなどと、考えもしなかったが、出会いは案外単純だ。
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